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[アップルパイ今昔物語]

菓子は果物という存在があったからこそ生まれたと言っても過言ではありません(いや言い過ぎか!?)。そこで、初回は原点を見つめる意味も込め、果物を使ったものを選ぶことにしました。となれば選ぶ果物はただ一つ。太古から食べられていて、かつ、この季節の代表的果物であるものと言えば...そうです。リンゴです。

では、リンゴを使ったスイーツといって我々世代が先ず思いつくのはなんでしょうか。え?アップルパイ?やっぱりそうですよねぇ。そこで今回は、少し趣向をこらし「アップルパイの起源から現在までを辿る」と題し二種類のリンゴパイを食べ比べる事にしました。

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先ずは、アップルパイの原型と言われる「アプフェル・シュトゥルーデル」を。ウィーン菓子の中でも最も古い菓子のひとつですが、元々はトルコ発祥の菓子です。珈琲やナッツと共にオーストリアに伝わり、その後、色々な形に変化して各国に広がったのだとか。


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新聞が透けて読める程薄くのばした生地で、リンゴ、レーズン、クルミを巻き上げ焼き上げられています。ちなみに、シュトゥルーデルとは「渦巻き」のことを意味します。
口に含むとリンゴの酸味、旨味がじわぁっと溢れます。旨い!いや美味いと書いた方が適当か。パイ生地の焼き加減も絶妙。物凄く上品な風味。逸品です。一見すると単純な作りですが、これは相当絶妙なさじ加減で作られたものと伝わってきます。甘いモノが駄目な人でもこれは気に入るはず。私はかなり気に入りました。


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ヨーロッパからアメリカ大陸に伝わりどのように変化したのかを検証する為、アメリカ(バージニア州)チャンプに指事した料理研究家が作りしアップルパイを取り寄せました。しかしこの外装と言ったら。。。イメージするアメリカそのもの。箱はやたら重いし。コッテコテじゃないの?と皆に不安が走る。

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箱を開けると、超弩級のアップルパイがドーンと鎮座していました。直径は24cm。しかし実際はそれ以上に大きく感じられます。その迫力(オーラ?)に「食えんのか!?」という空気が会場に溢れたのは言うまでもありません。それはもう黒船到来以来の衝撃だったかも!?このパイを見て、私はふと未知との遭遇を思い起こしていました。いやまさに未知との遭遇なんですが。


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意を決してカットしてみると。。。中にはリンゴがぎっしり。パッと見6層...いや8層くらいはあるだろうか。この様に「うはぁ〜」という声があちこちからあがる。しかしここはスイーツの会。このくらいで怯んではいられません。そこで切り分けれたパイを食べてみる。。。ん?。。。いける!ジューシーなリンゴ果汁(酸味)がじわじわ溢れてきます。パイの部分もかなり良い。うーむ、見かけとは裏腹にくどくなく物凄く食べ易いです。皆「やっぱりアメリカだよねぇ」と言い放つ準備をしていたのでちょっと裏切られた気分。もちろん良い意味でです。

・・・

比較をする前、私は「ヨーロッパからアメリカに渡る段で大幅に変化が生じただろう」という思いを抱いていました。しかし予想に反し、この二つにはしっかりと共通点が存在していました。それは、いずれもリンゴの澄んだ旨さ(酸味)がしっかり感じられるという点でした。

コーカサス地方(トルコ)からオーストリア、ヨーロッパ、そしてアメリカへと伝わったリンゴの道。アップルパイはその道を通ってきたということが、この二つのスイーツからとても鮮明に感じることが出来ました。

「アップルパイは、リンゴが主役のスイーツだった!」

それが今回の会での結論となりました。「なにを今更当たり前のことを言ってるのさ。アップルパイなんだから当然でしょ」。確かに。みんな頭では分かっています。でも...(少なくとも私は)今まで食べてきたアップルパイからは、そのような思いを”心から”感じることが無かったんですよね。だから、上記のような結論が出てきたのだと思います。

スイーツの会か・・・なんだ、結構面白いじゃん(えっ?)。


* 今回のスイーツ *
・アプフェル・シュトゥルーデル(コンディトライ・ノイエス
・アップルパイ(松之助



ちょっとマニアックな話になるので、興味がある方のみお読みください。


[アップルパイ今昔物語]_e0011761_13171638.jpg甘味が入ってしまうと香味を正確に把握出来なくなるので、スイーツを食す前に、この日用意した珈琲をカッピングしてもらうことにしました。カッピングとはいわゆるテイスティングのことです。皆カッピングは初めてなので、先ずは簡単にその方法を説明。その後、実際に試してもらいました。用意した珈琲は、ブラジル、コロンビア、ケニア、エチオピア(ナチュラル)の4種類。違いを楽しんでもらえるよう、キャラクターの違いが分かりやすいラインナップにしました。当然、出所(農園)は厳選しています(ここ重要)。

さすがに皆、飲食いが大好きなだけあり、いざカッピングとなるとその表情は一変。真剣な面持ちで珈琲をズッズズッと啜っていました。味わった珈琲がどのように感じたかを、用意したプリントに思ったままのことを書いてもらい、その後、私から簡単にそれぞれの特徴を解説しました。今回はここでおしまいにする予定でしたが、皆さん鋭敏な感覚を持っていることが分かったので、4種の豆を適当にブレンドしドリップしたものを飲んでもらい、それぞれの豆がどのような意味をもたらすのかをという体験をしてもらいました(素人なのに上から目線ですみません)。

これらの体験をふまえた上で、皆で、本日のスイーツに合わせるならどの珈琲がいいか考えました。その結果選ばれたのは「コロンビア」(他も試してみたいという声があったので、実験として他の豆もドリップしました)。珈琲の違いでスイーツの印象がかなり変わるということが分かったと思うのですが、さてどうだったでしょうか。
by taka-sare | 2008-11-06 16:28 | 飲む・食べる・呑む
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