[古老が舞った夜]

石戸蒲ザクラは大正11年(1922)10月12日に国の指定を受けた天然記念物です。指定当時はかなりの巨木で、日本五大桜の一つに数えられていました。戦後はしだいに衰えを見せ、現在では1本の幹と、孫生えが残るだけとなりましたが、毎年4月10日前後には、白く可憐な花を咲かせ、見学者の目を楽しませています。なお、樹種は和名「カバザクラ」という世界でただ1本の品種で、最近の研究ではヤマザクラとエドヒガンの自然雑種と考えられています(引用:北本が大好き)。

先日紹介したこの舞台の主役、イブ・チュニック(通称)の踊りを観ながら、私はこの樹齢約800年の桜(カバザクラ)の姿を思い浮かべていた。

・・・

男性が舞台に登場。神聖な舞踊ということもあってか、清めながら静かに祈りを捧げる。お香の香りが会場の隅々にまで漂うと、場の雰囲気がガラリと変わった。会場は静まり返る。いい感じ。祈りが終わると先ずは器楽演奏。その後、三人の踊り子が登場となった。今回の目玉であるイブ・チュニックは、踊り子二人(孫と曾孫)に両脇を支えられながら舞台裏から登場。三人はステージ脇にある椅子に座り自らの出番を待っていた。最後のレゴン(踊り子)と称される彼女は、通訳の説明によれば今年で88歳(推定)。確かにどこからどうみても「おばあちゃん」そのもの。この老婆が本当に舞台で踊りを披露出来るのだろうか。失礼とは思いつつその思いを拭いさることは出来なかった。

曾孫(18歳)はさすがに若いだけあって踊りが生き生き。当然熟成はされていないものの、観ていて小気味よく感じられた。孫(44歳)は脂がのる年齢だけあり安定感は抜群。実に堂々としたものだった。とりわけ男性的な力強さが迸る様が印象に残った。

さて、それら親族の長であるイブ・チュニックはというと...女史は二人の手を借り椅子から立ち上がると、おぼつかない足取りで一人舞台の中心へ。大丈夫か?さらに不安が高まる。そんな中、女史はガムランの音に合わせ踊り始めた。すると...

その指はほとんど反らず、例のギョロギョロ(バリ舞踊特有の目の動き)も控えめ。身体も大きく動かない。やはりこの公演は「イブ・チュニックの踊りを観ることが出来た」という事実に価値があるのか?と、ちょっと不謹慎な思いを抱きつつ踊りを見続ける。すると直ぐ様あることに気がついた。なんと、小さな動きながらもガムランの高速でリズミカルな伴奏に女史の身体全体が見事に反応していたのである。合わせているのではなく、血肉、そして魂が自ずと反応する。そんな感じ。あらゆるリズムに動きがフワッと合うのでとても心地が良い。メリハリがしっかりと感じられるので間延びが無い。気付けば老体を心配する自分は消え去っていた。

会場でもらったパンフにある「教わったのではなく見て覚えてしまった」という女史の言葉が紹介されていた箇所を読んで、なるほどと思った。そうでなければきっとあの踊りは生まれないだろう。しかし、そう感じることが出来たのは、おそらく女史の動きが少なかったから。もし動きが激しかったら...ここまで内面にまで思いが至らなかったかもしれない。


* おまけ *

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会場でつい、このようなものを購入してしまいました。
さて、これは一体なんでしょう?
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by taka-sare | 2008-09-30 14:01 | 音楽・芸能・芸術 | Comments(0)
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