[恒例の暑気払い(後編)]

定刻を少し過ぎた辺りで公演はスタート。

団長のスゥエントラ氏が微かに目や手を動かす度、楽団全体があたかも一つの生き物のように有機的に動く。これは、クラシック音楽で言うところの、指揮者ムラビンスキー(故人)とレニングラードフィルオーケストラとの関係に近しいかもしれない。(分かりづらい例えでゴメンナサイ)
今回は結構ステージに近い席だったので、その辺りの様子を楽しむことが出来た。

もう何度も聴いたはずなのに...今回も、竹から発せられる硬軟様々な音色や、音を超越した波動に陶酔した。曲目が進むと、今度はそんなバンブーサウンドに、バリ太鼓や、青銅の音色が混ざる。プリミティブなのにモダン。琴線にふれてしまい無抵抗状態になる。気がつくと暑気はすっかり払われていた。しかしまぁ、大音量がこれ程心地よいと思えることは、そう滅多にない。
これは耳や脳ではなく、身体全体、いや、細胞レベルで聴いているからに違いない。
いや、ここまでくると、もう理屈はどうでもよくなる。

期待に反し?、公演後半にステージに呼ばれ団員と踊るコーナー?は設けられなかった。その後、演目は進み、アンコールの後、公演は終了となった。

・・・

ジェゴクの認知度が上がった為でしょうか。ここ数年、東京公演は大きなホールで演奏されることが多くなっていました(参考:サントリーホール 2006席。すみだトリフォニーホール1801席)。バリ島の音楽は音楽性が非常に高いので、音楽鑑賞と捉えれば、それはそれで全く問題はありません。実際、初めてジェゴクを大ホールで体験した時は、充分に感動出来ましたし、サントリーホール(舞台を客席が囲むホール)での試みは非常に興味深いものがありました。

しかし、演奏側と観客との間に物理的かつ精神的な距離感が生じ、結果、一体感に欠けてしまうように感じたのもまた事実です。もちろん、バリ島以外で体験する以上、このようなことは仕方のない事だと思います。ですから、これまで、そのことは重々承知の上で東京公演を楽しんできました。でも...

ジェゴクの根っこにあるものは儀礼・祭礼です。
やはり、あまりにも大きなホールになってしまうと、音楽的な部分が強くなってしまい、儀礼や祭礼の部分が楽しめなくなってしまうような気がします。もちろん、規模の大小だけが原因ではないとは思いますが。私見ですが、おそらく今回のこもれびホール(席数662)位の規模が、大きさの上限なのではないかと思います。

・・・

こんな風に書くと「そこまで言うんだったら、現地に行ってくりゃいいじゃないか」とツッコミのお言葉を頂いてしまうかもしれませんね。いや全くその通りです。
今回、会場が広すぎなかったせいか、演者の熱気にあたってしまい「バリ音楽・芸能のほとんどは、音楽である以前に祭礼なんだよなぁ。祭りの部分を体験するんだったら、やっぱり現地に行かねばなぁ」という思いが強くなった次第です。
うーむ。こりゃあ、来年の暑気払いはバリで...かな?


* 追記 *

この記事を書き終えた後、「竹音」という小冊子を読んだら、スェントラ氏はその中でこう語っていました。
「ジェゴクの音は(中略)野外であれば、そこにある土、木や植物、建物、その空間全部と、劇場のなかでは、反響する音をも巻き込むように、演奏する土地、場所にすでにあるパワー(タクスゥ)と響働するのです」

演奏する場が変われば、当然、その土地ならではの演奏が生まれる。しかしジェゴクはジェゴク。そのことが本質を変えることはない、ということか。
だとすると、場所のことを云々していた私はピントがずれていたのかもしれません。うーん。深いなぁ。




スアール・アグンの公演は常にタイトルが付けられていますが、今回の公演には「Sabda Jagat Sakti dengan Junamurti」(大地の改心の叫び)というタイトルが付けられていました。昨年同様、団長のスゥエントラ氏は、今、この世に起こっている様々な事象に対し心を痛めているようです。

例えば、そのことは5曲目に見て取れました(以下、プログラムからの抜粋)。


第二部

5. Tari Jinamurti(ジナムルティ舞踊曲)

2006年・新作舞踊演奏曲。神が地球・自然そして人類を誕生させました。人類は大地に誕生し、それぞれ与えられた命(性格別)の限り、それぞれの務めを果たすのです。これまでは神は地球の平和と安定した生活を願い守ってくれました。しかし経済成長や科学の発達と共に、人類のエゴが犯した地球・自然破壊からの天災が今地球上に起きています。地球・自然の偉大さ、怖さを知り、人類が反省と共に、地球そして人類が平和に過ごせるよう願いましょう。
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by taka-sare | 2006-08-08 11:44 | 音楽・芸能・芸術 | Comments(0)
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